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『塩狩峠』三浦綾子

カテゴリ : 読書感想文(金)
椎名林檎が音楽もすべてひっくるめて最も影響を受けたというのが、三浦綾子の小説『塩狩峠』だという。国語のテストで初めてそれを読み、思わず泣き出してしまったという。

私の敬愛する椎名林檎が最も影響を受けたという『塩狩峠』ということで、読まなくてはと思い、読みました。

塩狩峠 (新潮文庫)
塩狩峠
完璧でした。エピソードの一つ一つがいちいち心に響く。

学校におばけが出るというので、夜みんなで集まろうということになった。
しかし、雨が降り出してきたので、信夫は行かないことにしようと思う。だが、父の貞行は「約束は破るべきではない」という。
信夫はしぶしぶ、誰も集まっていないと思いつつも、学校に行った。すると、一人だけ学校に来ていた。吉川は「約束だからな」といった。信夫は、自分は父に言われて仕方なく来たのであって、なんだか恥ずかしく思えた。吉川が本当にえらいと思った。

それがきっかけで信夫は吉川と親しくなるのだが、ある日吉川が「死にたいと思うことがある」と言い出す。吉川の父は酒を飲むと母に暴力を振るう。だから、もうお母さんに暴力を振るわないで下さいと手紙を書いて死のうと思うことがあるというのだ。しかし、妹のふじ子のことを思うとできない。ふじ子は生まれつきびっこで、みんなにいじめられる。自分がついていてやらなければと思う。
その話を聞いて信夫は、吉川が自分より大人に見えた。その後、吉川の母とふじ子にも会うが、とても父に暴力を振るわれていたり、みんなにいじめられたりしているようには見えなかった。
世の中には表面には現れないものがあるのだ。

こういうエピソードが何度も出てきて、いろいろと考えさせられるのだ。人間の内面に表れるいろいろな葛藤だったり、思想が描かれているのだ。
私はSF小説のような、中身のない表面だけエキサイティングな作品が好きで多く読んできたが、この『塩狩峠』を読んで、それまで読んできた多くの小説が無意味なものだと思えてきた。
「思想を語れよ」と思ってしまう。
『塩狩峠』は思想に溢れている。そして登場人物の信夫も吉川も、とても純粋で綺麗な心の持ち主なのだ。だからこそ共感し、感動さえするのだ。

この小説はキリスト教がひとつのテーマになっている。
仏教で育ってきた信夫はキリスト教を受け入れなかったが、ある宣教師の言葉に強く惹かれる。
「イエス・キリストは何一つ悪いことはしなかった。多くの人を救い、人々に、本当の愛を教えたのです。
悪いことをしながら、自分は悪くないという人もいるのに、何一つ悪いことをしなかったイエス・キリストは、この世のすべての罪を背負って、十字架にかけられたのです。それなのにイエス・キリストは、自分を十字架にかけた者のためにこう祈ったのです。
『父よ、彼らを許したまえ。その為す所を知らざればなり』
みなさん、今自分を刺し殺す者のために、許したまえと祈ることのできるこの人こそ、神の人格を所有するかたであると、私は思うのです」

信夫はその宣教師と話をする。そしてこう言われる。
「君は自分を罪深い人間だと思いますか」
信夫は自分はまじめな人間だと思っている。性的な思いにとらわれた時は、自分でも罪深いと思うことはあるが、それもさほど罪深いとも思えなかった。
宣教師はこうアドバイスした。
「聖書に書いてあることをどれでもいいから一つ徹底的に実行してみなさい。徹底的にです。すると、あるべき人間の姿に、いかに自分が程遠いものであるかがわかるはずです」

信夫は良きサマリヤ人の部分を読み、実行することにする。
強盗に襲われて半死半生で倒れている人がいて、多くの人が見て見ぬ振りをして通り過ぎる中、あるサマリヤ人がその人を助けるという話。
信夫は、半死半生で倒れている人間を助けないなどということはあり得ないと思えた。
しかし、いざ自分自身の近況に重ね合わせると、思い当たるところがあった。
そしてそこから、信夫はひたすらに純真であろうとする。

私はまったく信夫に共感した。自分はまじめで純粋な人間だと思っている。しかし、徹底的にかというとそうではない。困っている人を100%助けてきたかといえば、そうではない。寒さの中で縮こまっているホームレスを見ても何もせずに通り過ぎてきたし、そういうことはいくらでもあるような気がする。
そうすると、人間は誰しもが罪深い。「義人なし、一人だになし」なのだ。

イエス・キリストというのはだから、完璧に純粋で誠実であるという、現実にはあり得ない人間の理想の姿の象徴なのだろう。だから神の子でありうる。
そして、少しでも完璧な理想に近付こうとするのが、「信仰」なのではないか。

ひたすらに純粋でありたいと思う。
思想は伝わった。
椎名林檎が最も影響を受けたというのもわかる気がする。
『塩狩峠』は完璧な小説だった。完璧な思想だった。
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